
パナソニックのエンジニアが、およそ14年前に開発されたレンズ、Leica DG Vario-Elmarit 35-100mm f/2.8について語った記事が公開されました。この中で、当時の開発における非常に興味深い技術的な詳細や設計の選択が明らかになっています。
本レンズの開発チームは、性能とコンパクトさの両立という課題に直面し、実機でのエルゴノミクスを検証するために複数のモックアップを作成しました。その結果、妥協することなく、厳しい制約の中で独自の設計思想が確立されたことが語られています。
この記事では、レンズ設計におけるエンジニアたちのこだわり、革新的なアプローチ、そして使用感を高めるための工夫について、具体的な事例を交えながら深掘りしていきます。
この記事のポイント
- 目標サイズ「99.9mm」への徹底的なこだわりと、偶然の一致
- コンパクトさと堅牢性を両立させる高リスクな光学設計
- AFとO.I.S.高速化を実現するための徹底した軽量化アプローチ
- 遠距離でのシャープネスと近距離での美しいボケを両立させる設計思想
- インナーズーム機構による望遠ストリートスナップの提案
「99.9mm」へのこだわりと偶然の一致
レンズ設計において、チームは性能とサイズの厳しいトレードオフに直面しました。実機でのエルゴノミクスをテストするために複数のモックアップが作成され、最終的な目標は「100mm未満」という厳しい全長でした。
その結果、レンズの最終的な長さは厳密に99.9mmに収まりました。この寸法について、開発担当者は奇妙な偶然の一致を指摘しています。オリジナルの35-100mmの設計から10年以上が経過した2025年にリリースが予定されているフルフレームのLUMIX S 24-60mm F2.8も、偶然にも全長が99.9mmになったと報じられています。
高リスクを伴う光学設計
レンズのコンパクトさと堅牢性を確保するため、設計者はインナーズーム機構を採用しました。これにより、ズーム時にレンズ鏡筒が物理的に伸びることはありません。この枠組みの中で、彼らは正-負-正-負と交互に配置されたレンズ群レイアウトを選択しました。この交互配置は光を大きく曲げることが非常に容易で、大幅な小型化を可能にしました。
しかし、このレイアウトは量産時の取り付け精度や部品精度に対して非常に敏感です。光学性能の劣化を防ぐため、パナソニックは厳密な公差に対応すべく、工場における部品の機械加工および検査精度を大幅に向上させる必要がありました。
「単位重量あたりの屈折力」の計算
オートフォーカス(AF)と光学式手ブレ補正(O.I.S.)の速度を最大化するためには、可動エレメントを可能な限り軽量に保つ必要がありました。ガラスが軽ければ、より小さく軽い駆動モーターを使用できます。
これを実現するため、設計者は異なるガラス素材について、単位重量あたりの屈折力を比較する専門的なインデックス表を作成しました。さらに、フォーカス群と手ブレ補正群にも凸/凹の交互配置の理念を適用し、可能な限りグラム単位での軽量化を追求しました。
ボケとシャープネスの二面性
一般的にレンズは、開放絞りでの高いシャープネスと、美しく柔らかな背景ボケの両立に苦慮します。しかし、パナソニックはこのレンズを、被写体までの距離に応じて異なる振る舞いをするように設計しました。
- **遠距離撮影**: 球面収差をほぼゼロに補正することで、無限遠での最大のシャープネスと高いコントラスト表現を確保します。
- **近距離撮影・ポートレート**: 近距離では意図的にわずかな球面収差を残す設計になっています。これにより、合焦面をわずかに柔らかくし、中央が明るく、縁に向かって徐々に暗くなる背景ボケを生み出します。これは、煩わしい「二線ボケ」を避ける効果があります。
40%を占めるレンズフード問題への対策
逆光への強い耐性を確保するため、望遠ズームレンズには通常、非常に長いレンズフードが必要です。しかし、この非常にコンパクトなレンズの場合、レンズフードはレンズ全体の占有面積の約40%を占め、携帯性を損なう要因となります。
かさばるフードなしでも写真家がクリアに撮影できるように、LEICA DGリニューアル版では、従来の高性能ナノサーフェスコーティングに加えて、鏡筒内部に新しい遮光材を導入し、迷光の吸収能力を高めました。
望遠レンズによる「ストリートスナップ」の普及
開発者は、この高性能な望遠レンズを日常的なストリートスナップ撮影に積極的に活用することを推奨しています。インナーズーム機構により、ズーム時にレンズが物理的に伸びることがないため、目立つ「バズーカ」のようなレンズに見えず、写真家は目立たずに自然なポートレートや圧縮効果を活かしたストリートの構図を捉えることができます。
編集部コメント
Leica DG Vario-Elmarit 35-100mm f/2.8は、現在も多くの写真家から支持されるパナソニックの高性能望遠ズームレンズです。今回公開された開発秘話からは、単なるスペック上の数値を追求するだけでなく、エンジニアたちの製品にかける情熱と、ユーザー体験を深く考慮した緻密な設計思想が垣間見えます。特に、99.9mmという目標寸法へのこだわりや、インナーズームを維持しながら光学性能とコンパクトさを両立させるための高リスクな設計選択は、技術的な挑戦の深さを示しています。また、遠景でのシャープネスと近接での美しいボケを両立させる「二面性」の設計や、望遠レンズでありながら目立たない特性を活かしたストリートスナップの提案は、本レンズの持つ多様な可能性を示唆しています。発売から時を経ても色褪せない、このレンズの奥深さを改めて感じさせる情報と言えるでしょう。
本記事は海外メディアで公開された情報を参考に、日本向けに内容を整理・要約しています。
参考記事:Panasonic engineer talks about the Leica DG Vario-Elmarit 35-100mm f/2.8 development – 43 Rumors
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